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田んぼと宅地の家

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敷地はかつて街区全体が田んぼであった場所である。街区内の田んぼはあぜ道と用水路によって区画され、それぞれに持ち主の異なる11枚の田んぼからなっていた。1970年頃にいくつかの土地は造成され、当敷地が属していた田んぼもその頃に5筆の宅地に分けられた。敷地はその5筆の中の端に位置し、東側と南側が田んぼに面しており、5筆の中で最も田んぼ側と言える敷地である。ここであるべき風景について考える。

現代の人が求める「快適な住まい」において、田んぼと隣接することはリスクと捉えられがちである。田んぼに生息する虫や蛙、湿気、田んぼに出入りする他人もその対象である。
それらから住環境を守るために擁壁を高く積み上げ、フェンスで囲い、できる限り遠ざけるように生活している。このような状況は、自らその場所に住む意味を失っているのではないか。その場所を選んで、その場所の歴史に参加するような住宅の在り方を考えたい。

敷地を、擁壁をできるだけ低くした田んぼ側の領域と、道路と隣家に接した宅地側の領域に分けてみると、自分の敷地が小さくなって、敷地を田んぼ側に明け渡したかのように見えてくる。そこにまたがるように建物をかぶせ、住宅を作る。そうすることで宅地と田んぼとにまたがるような、建ち方を目指した。

田んぼ側の領域は、地面から空まで繋がる開口部を設けた吹き抜け空間とし、外部空間のスケールと近づける。田んぼ側の吹き抜けと宅地側の居住空間の境界は、床と土間の段差として現れる。宅地側の全ての居室は田んぼ側の吹抜けと繋がっており、常に部屋のスケールから田んぼやそこから連続する風景のスケールまでの繋がりを感じながら生活する。
5月〜10月は変化していく水田の風景を取り込みながら、11月〜4月は休耕なので敷地の延長として広大な庭を子供達が走り回るかもしれない。
田んぼと宅地の間に位置するこの敷地において、住宅内部を横断する新たな境界を設定することで、この住宅が田んぼと宅地のどちらにも属するような、またはその中間のような在り方になればと考えている。

所 在 地:愛知県一宮市
用 途:専用住宅
主 構 造:木造 2階建て
敷地面積:165.39㎡
延床面積:122.42㎡

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