農家住宅の分筆
敷地周辺は田んぼと農家住宅からなる比較的低密度なまちが、局所的で高密度な住宅供給により、徐々に密度のバランスを変えつつある状況であった。人口が減少傾向にある中でこの状況が進めば、人々は狭い場所に小さく住み、余った多くの場所は使われないようなまちになっていくのではないだろうか。
そこでまちの密度を調整し、風景を継承する更新手法を考える。
農家住宅は大きな敷地と複数棟から構成されており、現代の一世帯で住むには少し大きい。その敷地の大きさとまちの密度に合う住まい方を話し合い、風景の輪郭である屋根を残しながら、その下を新しい生活に合わせて自由に計画していく。その際、内部を囲い取る壁、領域を規定する床、敷地境界線といった計画要素を、屋根をはみ出すように、または横断するように配置することで、既存建物の境界や形状を超えて多様な場所をつくることができる。建物は敷地をまたがるように見えその境界をぼかし、生活は様々な年代・工法・形状の屋根群を横断し、かつて閉じていた中庭は通り抜けられるようになり共用の広場のような場所になる。
この住宅をきっかけに、例えば家族が増えれば隣地の一部を合筆して所有領域を増やしたり、手広になれば分筆してシェアするといったように、農家住宅の屋根群はそのままに、その下にある生活空間や敷地境界線が、住まい方に応じてどんどん描き替えられ、低密度なまま豊かに更新されていく風景を想像している。
所 在 地:愛知県一宮市
用 途:専用住宅
主 構 造:木造、鉄骨造 2階建て
敷地面積:856.38㎡
延床面積:89.20㎡、82.66㎡
press
新建築住宅特集2017年1月号
awards
SDレビュー2016 入選
exhibition
SDレビュー2016 第35回建築・環境・インテリアのドローイングと模型の入選展
(代官山ヒルサイドテラス、京都工芸繊維大学)